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体罰をしてはいけない5つの理由|親の体罰禁止法

体罰禁止 理由

改正児童虐待防止法・改正児童福祉法により親による体罰禁止などが定められました。

しかし、体罰禁止に対して批判的な声もあるようです。

そもそもなぜ体罰をしてはいけないのか?
その理由は、厚生労働省の示したガイドラインに記載されています。

体罰容認派の声

今回の体罰禁止に対して批判している人たちは、2つのタイプに分かれるように思います。

  1. しつけとしての体罰は必要だと思っている
  2. 体罰がダメなのはわかるがやむを得ずやってしまうこともある

②の人たちは、体罰はダメだとわかっているけどうまく行かないだけ。

「じゃあこんな時どうしろっていうの?」
「それしか方法がないときもあるのに禁止だなんて…」という感じの批判です。

これはわたしも共感できます。
ダメだとわかってるけど、感情が抑えられずにやってしまって後で反省…というパターン。

でもこちらのタイプの人たちは意外と大丈夫ではないかという気がするんです。
たとえ今はうまく行っていなくても、悩みながら試行錯誤して体罰を使わない育児やしつけの方法を学んでいけるはずですから。

問題は①の人たちです。

「しつけのために子どもを叩くことはやむを得ない」
「愛情があれば叩いても理解してくれる」
「自分自身もそうやって育ってきた」
「大人としてなめられてはいけない」
「痛みを伴う方が理解をする」

体罰は正しいこと、必要なことだと思っている。
なぜ体罰がダメなのか理由がわからない、という人たちです。

①の人たちが、今回の法律のターゲットではないでしょうか。

なぜ体罰をしてはいけないのか

なぜ体罰をしてはいけないのかについては、厚生労働省のガイドラインにわかりやすく記載されています。

理由1:恐怖で支配しているだけで、子どもの成長の助けにならない

体罰によって子どもの行動が変わったとしても、それは叩かれるのが怖いから親の言うことに従っているだけで、どうしたらいいのかを自分で考えたり、学んでいるわけではありません。
体罰は、痛みや苦しみを利用して子どもの言動をコントロールしているだけです。

体罰は子どもの成長の助けにならないのです。

体罰は確かに手っ取り早いです。子どもはすぐに言うことを聞くでしょう。
でもこれは、恐怖で支配しているだけで「しつけ」でもなんでもないんですよね。

理由2:子供の成長・発達に悪影響があるから

体罰が子どもの成長・発達に悪影響を与えることは、科学的にも明らかになっています。

 行動障害のリスクが高まる

厚生労働省の調査データ約2万9000人分を使って行われた分析によると、3歳半の時に保護者から体罰を受けていた子どもは、体罰を全く受けていなかった子どもに比べ、5歳半の時に次のような行動障害のリスクが高まっているそうです。

  • 落ち着いて話を聞けない
  • 約束を守れない
  • 1つのことに集中できない
  • 我慢ができない
  • 感情をうまく表せない
  • 集団で行動できない

これらのリスクは体罰が頻繁に行われるほど高まると指摘されています。

MEMO

藤原武男他「幼児に対する尻叩きとその後の行動障害:日本におけるプロペンシティ・スコア・マッチングによる前向き研究」2017より

 13種類もの有害な結果を引き起こす

テキサス大学とミシガン大学が発表した研究論文によると、手のひらで叩くなどの体罰を行うと、13種類もの有害な結果を引き起こすことがわかっています。
例えば次のようなものです。

  • 周りの人を傷つけるなど反社会的な行動が増加
  • 感情的に切れやすく攻撃性が強くなる
  • メンタルヘルスの悪化
  • 親子関係が悪化

軽い体罰でも深刻な虐待と類似した影響

お尻をたたくといった程度の軽い体罰であっても、深刻な身体的虐待と同様に子どもの発達に悪い影響があることがわかっています。

頭は叩いたらダメだけどお尻を叩くくらいなら大丈夫でしょ、と思っている人も多いようですが、軽い体罰でも同じような悪影響があるんですね。

 

その他、言葉の暴力や親のDVを目撃する…といったことでも子どもの脳が傷つくことがわかっています。
詳しくはこちらの記事で書きました。

子供の脳を傷つける親たちマルトリートメントとは?『子供の脳を傷つける親たち』を読んで

理由3:子供の権利を侵害するから

全ての子どもは、健やかに成長・発達し、その自立が図られることが権利として保障されています。

「児童の権利に関する条約」では、あらゆる形態の身体的・精神的な暴力や不当な取扱い等を防ぐための措置を講ずることとされています。

子どもへの暴力は子どもの持つ様々な権利の侵害につながるのです。

「子供は親の所有物」「自分の一部」みたいな感覚がどこかにあると、子どもの権利といってもあまりピンとこないのかもしれません。




理由4:悪循環に陥るから

親の行動は子どもにとってのモデルになります。
親が子どもを叩いたり怒鳴ったりすると、子どもは他人に対して同じようなことをしてしまうかもしれません。
「悪いことを身をもって覚えさせる」という行為は、子どもが暴力を学ぶきっかけになってしまいます。

これは本当に実感しています。
次男が末っ子に対して怒って怒鳴りつけている口調は、わたしが怒っているときそっくり。
こういう言い方やめなきゃな…と反省します。

理由5:親子の信頼関係が築けなくなる

体罰は恐怖で子どもを支配する行為だと説明しました。

子どもが親に恐怖等を持つと、信頼関係を築きにくくなります。
その結果、親に悩みを相談したり心配事を打ち明けることができなくなり、いじめや非行など、より大きな問題に発展してしまう可能性があります。

子どもの成長に悪影響が出たり、悩みを相談できないほど親子の信頼関係が壊れることは、どの親も望んでいないはずですよね。

「体罰禁止」は親を追い込むものではない

冒頭で、「体罰禁止」に対する批判は2つのパターンがあると書きました。

  1. しつけとしての体罰は必要だと思っている
  2. 体罰がダメなのはわかるがやむを得ずやってしまうこともある

②のパターンで「体罰禁止」を批判している人たちには、今回の法律は親を追い詰めるためのものではないことを知ってもらいたいです。

体罰禁止 いつから親の体罰禁止法はいつから? 体罰の内容の線引きは?

厚生労働省のガイドラインにもこのように記載されています。

保護者を罰したり、追い込むことを意図したものではなく、子育てを社会全体で応援・サポートし、体罰によらない子育てを社会全体で推進することを目的としたもの

「ダメだとわかっているがやってしまう」人については、

  • 他に方法が思いつかない
  • 時間や気持ちの余裕がない
  • イライラしてつい感情的になってしまった

というところではないでしょうか。

わたしもこのパターンで子供を怒鳴りつけてしまうことあります…

ガイドラインでは、体罰によらない子育てのヒントなども示されています。(後日、紹介していきたいと思います)

また、親が一人で抱え込んで孤立しないように、社会全体でサポートしていくことが大切だと記載されていました。

これは本当に、切実な願いです。

サポート体制ももっと充実させてほしいし、子育て中の親に対して、そして子どもに対してもっと寛容で温かいまなざしを向けてもらいたいと思います。
子育て中の親に対する社会の目が厳しすぎる…