マルトリートメントって知ってますか?
「クローズアップ現代」や「世界一受けたい授業」などテレビ番組でもちょこちょこ取り上げられているので聞いたことがある人も多いかもしれませんね。
「マルトリートメントが子供の脳を変形させる」という衝撃的な帯を見て、福井大学の友田明美教授が書いた『子供の脳を傷つける親たち』という本を購入。
虐待に関する本なのだろうということは想像できますが、いったい何をしたら子供の脳が変形してしまうの!?
本を読んだ感想を書きたいと思います。
マルトリートメントとは?
マルトリートメント(maltreament)とは、強者である大人から、弱者である子供への不適切な関わり方のことを言います。
でも、マルトリートメントには、もっと広くどこの家庭でも日常的にありがちな「不適切なかかわり」も含まれます。
たとえば、言葉による脅し、威嚇、罵倒、無視、放っておく、子供の前で激しい夫婦喧嘩をする・・・など。
こうした不適切な関わり方をすべてひっくるめてマルトリートメントと呼ぶそうです。
この時点で「ああ、やってしまってる・・・」と思った方もいるかもしれませんが、本書にでてくるマルトリートメントの具体例をみると、「えっ、それもダメなの!?」というものがたくさんあると思います。
心当たりある・・・! マルトリートメントに該当する具体例
マルトリートメントの具体例をいくつか抜き出して紹介します。
ネグレクトに該当するマルトリートメント
- 子供の視力が0.1しかないのにめがねを買ってやらない
- 予防接種を受けさせない
- 病気になっても病院へ連れていかない
- 子供が泣いても無視し続ける
- スキンシップをまったく取らない
- 話を聞こうとしない
- 赤ちゃんがぐずっているのに気づいているけどゲームがおもしろくて手が止められない
- 子供が帰宅したのはわかっているけどメールやラインの返信に夢中で顔すらあげない
- 話しかけに聞こえないフリをする
夕飯の仕度で忙しいときに遠くから「ママ、これ見てー!」なんて言われたら、聞こえないフリしちゃうこと、よくあります・・・
地味に傷ついてるのかもしれませんね。「いま無理ー!」でもいいから返事するようにします。
存在を否定するマルトリートメント
- 「お前なんか生まれてこなければよかった」
- 「あんたがいなかったら結婚もしなかったし、こんなに苦労もしなかったのに」
- 「本当に何をやらせてもダメだ」
- 兄弟間で差別する
- 子供の前で母親が父親をひどく中傷する(その逆も)
- 子供の前で祖父母が両親の悪口を言う
- 「人に物を投げるなんて、お前はクズだ」
うちの両親は夫婦喧嘩でコミュニケーションを取っているのかというくらい毎日のように激しいけんかをする人たちでした。
わたしは母親の愚痴の聞き役をさせられていましたし、あまりに夫婦喧嘩がひどいので母に「離婚したら?」と言ったときは「あんたたちがいるから離婚もできない」と言われたのを今でも覚えています。
こういう行為が子供の心をどれだけ傷つけるかというのは、自分の身をもって感じているので、子供たちには絶対にやりません。
子供のプライドを傷つけるマルトリートメント
- 子供の気を害するような悪口を言う
- 「だからあんたはダメなのよ」
- 「なぜこんなこともできないの?」
- 人前でばかにしたり恥をかかせる
- 人前で暗算の練習をさせて、間違えると謙遜まじりに「困ったことにねえ」と苦笑いする
日本では「謙遜」が美徳とされていますからねぇ。。。
子供を馬鹿にしているつもりはないんです。
でも、子供たちが遊んでいるのを見守りながらママ友とおしゃべりしていて「○○ちゃんはそんなことができるの?すごいねー。うちの子なんてぜんぜん・・・」みたいなこと、言ってしまったりしませんか?
そういうの、子供は案外しっかり聞いていて、ひそかに傷ついているかもしれません。
その他のマルトリートメント
- 両親間のDVを目撃する
- 大声をあげる
- 危害を加えると脅かす
- 子供がおこなわなかった行為に対して責める
「大声をあげる」要するに怒鳴ることですね。
特に朝、起こしてご飯を食べさせて学校に送り出すまで、眠くて動かない子供たちに大きな声を出してしまうことは日常茶飯事です。
あと、つまらないことで兄弟げんかばかりして「もういいかげんにしなさい!!」ってときとか。
マルトリートメントを受けると子供の脳がどのように傷つくのか
筆者も書いておられますが、こうしたマルトリートメントがまったくない家庭など存在しないでしょう。
でも、マルトリートメントの強度や頻度が増したとき、子供の心は確実に傷つき、成長過程の脳は変形するのだそうです。
『子供の脳を傷つける親たち』では、脳の画像を掲載して、どのようなマルトリートメントを受けたときに、脳のどの部分が萎縮し、その結果どのような悪影響が出てくるかといったことが詳しく解説されています。
たとえば、厳格な体罰は脳の前頭前野や右前帯状回が萎縮して、気分障害や、非行を繰り返す素行障害につながるのだそうです。
衝撃事実!子供の脳が傷つくのは「身体的な虐待」よりも・・・
驚いたのは、身体的な虐待よりも、「言葉の暴力」の方が脳への悪影響が大きいという点です。
言葉の暴力を繰り返し浴びると、脳の一部が肥大化して、情緒不安定を起こしたり、人とかかわること自体を恐れるようになるのだとか。
暴力よりも暴言の方がまだマシ、手を出すのは許されないけど言葉なら別にいいだろうという感覚がありましたが、脳へのダメージの大きさは逆なんですね。
また、子ども自身が暴力や暴言を受けていなくても、親のDVを目撃することで脳が大きく変形するそうです。
しかも、両親間の身体的な暴力を目撃したときより、両親間の暴言に接したときの方が脳へのダメージが大きいといいます。
わたしなんて、毎日親の夫婦げんかを見て育ってきたので、相当脳がやられてそうです。
今までよくがんばって生きてこれたな・・・って自分で自分をほめてあげたい。
知らずに日常化するのと知っておくのでは大違い
先ほども書きましたが、子育てをしている中でマルトリートメントを一度もやったことがない人なんていないと思いますし、良くないとわかっていてもやってしまうときや、やらないと前に進まないときもあると思います。
だから、この先絶対にマルトリートメントをしないで子供に接していくことも不可能な気がします。
知らない人は、しつけの一環として日常的に子供に暴言を浴びせたり、子供の前で激しい夫婦げんかを繰り広げて子供の脳を継続的に傷つけていくことになるかもしれません。
でも、少なくとも「これは子供の脳を傷つけるからやってはいけないことだ」と知っておけば、たとえやむを得ずやってしまうことがあっても反省して改めたり、自分をおさえたりすることができますよね。
『子供の脳を傷つける親たち』の中では、不適切なかかわりだけでなく、「ではどのように子供と関わればよいか」といったことも書かれていました。
子育て中の人、これから子育てをする人、おじいちゃんおばあちゃんなど子供と関わるすべての人にぜひ読んでもらいたいと思います!
▼表紙のデザインが変わっていますが、内容はわたしが読んだ本と同じです。