今、世界で注目されているSTEAM教育。
日本でも、経済産業省や文部科学省が推進していますね。
STEAM教育とは一体どんなものなのか、経済産業省や文部科学省は何をしようとしているのか、調べてみました。
STEAM教育とは?
STEAM教育(スティーム教育)とは、Science(サイエンス/科学)、Technology(テクノロジー/技術)、Engineering(エンジニアリング/工学)、Art(アート/芸術)、Mathematics(まセマティクス/数学)の頭文字をとった造語で、各教科での学習を実社会での課題解決に生かしていくための教科横断的な教育のことです。
子供たちが創造的・論理的に考え、未知の課題やその解決策を見出す力をはぐくむために、国はSTEAM教育の推進を図っています。
STEAM教育が必要といわれている理由
STEAM教育が注目されるようになったのは、2013年にアメリカのオバマ大統領が重要な国家戦略としてSTEM教育を取り上げたのがきっかけです。
最初は理数教育だけだったのですが、のちにArtが追加されてSTEAM教育となりました。
テクノロジーの発展により、人間がやっている仕事の多くをAIやロボットが担う時代がやってきます。
そんな時代を生きる子供たちは、テクノロジーを使いこなすだけでなく、テクノロジーでさまざまな課題を解決できるようにならなければなりません。
テクノロジーを使いこなすための「論理的思考力」をもちつつ、AIの苦手とするクリエイティブな分野を担う「創造力」「アイデア力」をもつ人材が求められているのです。
STEM教育とSTEAM教育のちがい。Artは必要?
最初はSTEM教育が注目され、のちにArtのAが追加されてSTEAM教育になったと説明しました。
なぜArtが必要となったのでしょうか?
アリゾナ州立大学のHenriksen博士は、このように話しています。
アートをベースとした教授法はSTEM科目に対するモチベーションや関心を高め、良質な学習を導く事ができる。
「STEMとSTEAMの違い。Artって必要なのか?」より
Artを加えることで自己表現の幅も広がります。
Artは、ものづくりにおいてとても重要な役割をはたしているんです。
無機質なものより、質感が違うものや色が違うものに多く触れることで子供の想像力を掻き立てたり、記憶に残りやすくしてくれるという効果もあるようです。
文部科学省と経済産業省がSTEAM教育を推進
日本では、文部科学省と経済産業省がSTEAM教育を推進しています。
経済産業省は、新しい学びの社会システムをつくるため「未来の教室」プロジェクトを始めました。
教育現場にベンチャーや学習塾のノウハウを導入するなど、実証実験をおこなっています。
文部科学省は、中央教育審議会においてSTEAM教育の推進に向けて審議しているところです。
文部科学省は何をしようとしている?
文部科学省の資料にはこのようにあります。
新時代に対応した高等学校教育の在り方
いわゆる文系・理系の類型に関わらず学習指導要領に定められた様々な科目をバランスよく学ぶことや、STEAM教育の推進
初等中等教育段階においては、STEAM教育を推進するため、「総合的な学習の時間」や「総合的な探究の時間」、「理数探究」等における問題発見・解決的な学習活動の充実を図る。
参考
新学習指導要領の趣旨の実現とSTEAM教育について(令和元年10月15日)
まだ審議の途中ですが、資料からわかるのは次のようなことです。
- 主に高校でSTEAM教育を推進しようとしている
- 文系・理系の分断から脱却したい(教科横断的な学習へ)
- 「理数探究」や「総合的な探究」「総合的な学習」の時間にSTEAM教育を導入しようとしている
また、このような記載もありました。
国は、カリキュラム・マネジメントの視点を踏まえ、人材活用も含め産学連携や地域連携によるSTEAM教育の事例の構築や収集、モデルプランの提示や全国展開を行う。
グローバルな社会課題を題材にした、産学連携STEAM教育コンテンツのオンライン・ラ イブラリーを構築する。
経済産業省の提言にもこのようにあります。
人それぞれ、ワクワクする(興味・関心がある)テーマもポイントも多様。そのため、無数のテーマのSTEAMコンテンツ(動画とスライドと解説)と、それを入口に現在の議論や研究の水準を知るサーベイや、必要な教科学習へと導くガイダンス、探究作法の習得プログラム等を集めた「STEAMライブラリー」が必要。
ライブラリーに紐づける形で、企業のエンジニア・研究者・大学院生等からSTEAM教育に携わる人材をプールする仕組みが必要。
STEAM教育については、プログラムと、指導者の不足が大きな課題であり、数多くのSTEAMプログラムの構築のほか、まずオンライン・ライブラリ化が必要ではないか。
STEAM教育を導入せよと言っても学校は何をすればいいのかわからず困惑してしまいますよね。
なので、モデル校での実証事業などをもとに、STEAM教育の教材やレッスンプランなどをまとめてストックしておく「STEAMライブラリー」を作るようです。
また、企業や外部の専門家の協力が得やすいようにマッチングする場を作る構想もあるようです。
教育新聞には、経済産業省が2020年度予算案の概算要求で「STEAMライブラリー」事業に33億円を計上したとあります。
今後どうなる?STEAM教育の課題とは
こうして見てみると、確かにSTEAM教育はこれからの時代を生きる子供たちに必要な教育だということがわかります。
ですが、日本で導入をするためには課題がいくつか考えられます。
まず、ICT環境の整備です。
これについては、小中学生を対象に1人1台のパソコンまたはタブレット端末を整備するとしています。
もともとは「2023年までに」となっていましたが、新型コロナウイルスによる臨時休校が長引いていることもあり「2020年度中に」前倒しして実現すると発表しています。
もう1つの課題は、STEAM教育を教えられる人がいないこと。
これについては、先ほどの文部科学省や経済産業省の資料にも出てきたとおり、「STEAMライブラリー」や、外部の専門家・企業で活躍している人と教育現場をマッチングする仕組みが検討されています。
たとえばイギリスでは、2500企業、3万人のSTEAMアンバサダーが加盟して、学校で生徒たちに教える取り組みがおこなわれているそうです。
あとは、家庭での理解。
文部科学省は、主に高校におけるSTEAM教育を推進しようと検討しているようですが、たとえば企業とコラボレーションしてAIを使ったものづくりをおこなっている高校生が「受験に関係ないでしょ」と家族から止められるようなケースもあるようです。
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