「国際バカロレア」って聞いたことありますか?
わたしは「世界に通用する大学の受験資格みたいなものだっけ・・・?」という程度の理解で、「帰国子女とかインターナショナルスクールの子の話でしょ?うちの子には関係ない」と思っていました。
ところが、長男が先日受けた模擬試験に書いていた志望校の1つが、国際バカロレア認定校だったんです。
- 国際バカロレア認定校ってどういうもの?
- 普通の高校とどうちがうの?
- メリット・デメリットは?
調べてみました。
国際バカロレアとは
国際バカロレアとは、そもそもはインターナショナルスクールの生徒が母国に帰ったときに困らないように、世界中で通用する大学入学資格を作ろうという目的で始まった教育プログラムです。
国ごとの学校制度に縛られない独自のカリキュラムに沿って授業が進められます。
このカリキュラムを終了し試験に合格すると「ディプロマ」という認定証書がもらえます。
この「ディプロマ」が世界中で通用する大学入学資格です。
授業に出て学校を卒業すれば自動的に「ディプロマ」を取得できるのではなく、試験に合格しないといけないので、体験談などを読んでいると結構大変そうな印象を受けました。
国際バカロレア認定校とは。普通の高校とどうちがうの?
国際バカロレア認定校は、インターナショナルスクールと「1条校」に分かれます。
1条校とはいわゆる一般的な高校。(※小学校、中学校などもありますがここでは高校にしぼって説明します。)
学校教育法の第1条に定められている教育施設なので「1条校」と言います。
同じバカロレア認定校でも、インターナショナルスクールと一条校では次のようなちがいがあります。
- インターナショナルスクール⇒日本の高卒資格が得られない
- 1条項⇒日本の高校卒業資格が得られる
では、普通の高校と、1条校のバカロレア認定校がどうちがうのかというと、勉強する内容がぜんぜんちがうんです。
普通の高校は、国語・数学・英語・理科・社会の5教科プラス副教科。
理科は生物・物理・化学、社会は日本史・世界史・地理・公民・・・といった感じですよね。
先生の授業を聞いて知識を習得していく学び方が一般的だと思います。
「受動的」な学び方と言えるかもしれません。
一方、バカロレア認定校の場合は、知識を詰め込むのではなく、知識の探求といった感じです。
「知の理論」という科目が中心になっていて、論理的思考(ロジカルシンキング)や批判的思考(クリティカルシンキング)、そして分析などに重点がおかれています。
詳しいカリキュラムの内容はこちらが参考になります。
参考
ディプロマ・カリキュラム文部科学省 IB教育推進コンソーシアム
通常は英語で受講するようですが、近年は「日本語ディプロマ」といって日本語でバカロレアのカリキュラムが受講できる認定校も増えてきています。
(ただし英語+1科目は英語で受講しなければならないようです)
一般的な高校の「国・数・英・理・社」のジャンルに該当する科目もあるのですが、決められた範囲を暗記して問題演習を解いて・・・というような学習法ではなく、レポートや課題をこなしてそれをもとにプレゼンテーションやディスカッションをするという形のようです。
国際バカロレア「日本語ディプロマ」取得者のインタビュー
といってもいまいち理解できなかったのですが、こちらのインタビュー記事を読むとなんとなくイメージできました。
ちなみにこの方は、帰国子女ではありませんし親が外国人というわけでもありません。
参考
緊急特別インタビュー:日本語DP取得者に聞くチノメザメ
上記のインタビューから抜粋して紹介しますね。
(きつかったのは)課題の多さですね。期限も設けられていて、それが次々にやってくる
予習・復習するのは楽しかったです。単純に暗記するというのではなく、自分なりの観点を持って、課題を探求することができて、それを表現できる。こんな学び方があるんだって。
授業ではみんなが予習してきたことを共有しますが、ボッコボコに反論され、論破されることもあるんですよ。その時は、ムカつきますが、心の中では、「悔しいけど、いいとこ突いてくるな」って思ったりしました。「次、見てろよ!」と思いつつ。でも、お互い様です。議論を戦わせることによってそんな風に自分たちの考えがどんどん磨かれていくというか、もっといいものになるのを感じました。
最初は、確かに、何を考えればいいのかもわかりませんでした。他人に自分が考えていることを伝えるのって、こんなに難しいのかって思いました。
最初は戸惑いも多かったのですが、他の教科との共通点を見いだせれば、どのように考えたらいいか、どうアプローチすればいいかがだんだんわかってきます。
情報を一回、自分で咀嚼して自分なりの解釈をする習慣が身についたと思います。ニュースやメディアで提供される情報もそのままは受け取らなくなりました。
ディプロマは世界的に価値のある資格?
国際バカロレアのプログラムを終了し、試験に合格すると「ディプロマ」という資格が得られます。
インターナショナルスクールのように日本の高卒資格が得られない学校でも、ディプロマを持っていれば、日本の大学のAO入試や海外の大学の入学資格となります。
ただ、ディプロマで受験できるのは日本の大学すべてというわけではありません。国際バカロレアに対応している一部の大学のみです。
対応している大学はこちらに掲載されています。今後もっと増えるのではないかと思います。
参考
国際バカロレアを活用した大学入学者選抜例(平成30年12月現在)文部科学省 IB教育推進コンソーシアム
選抜方法は大学によってさまざまですが、書類選考のみ、あるいは面接と小論文というスタイルが多いようです。
ハイスコアでディプロマを取得した場合は、難関大学の合格に有利です。
なお、日本の高校(一条校)のバカロレア認定校を卒業している場合は、高卒資格があるのでディプロマを取得していなくても日本の大学の受験資格はあります。
ただ、普通の高校生が勉強してきた内容とはまったくちがった学習をしてきているので、一般の大学入試に対応できるかというと、ちょっとしんどいかもしれませんね。
ディプロマは当然ながら海外の大学の入学資格にもなります。
特に、ハイスコアでディプロマを取得している場合は、ハーバード大学やオックスフォード大学など海外の名門大学の入学資格にもなります。
また、海外の大学の場合、入学後に基礎科目の受講が免除されたり奨学金が給付されるなどのメリットもあるようです。
どちらかというと、日本国内よりも海外へ進学する際に有利になる資格と言えます。
国際バカロレアのメリット・デメリット
国際バカロレアのメリット
探求型の教育が受けられる
これは親として非常に魅力的に感じました。
自分が過去に受けてきたような、詰め込み型・暗記型の教育ではなく、自分で問いを立てて調べてプレゼンしてディスカッションして・・・という教育は、日本の学校ではなかなか受けられませんよね。
卒業生のインタビューを見ても、「大変だけどおもしろかった」という声がありましたし。
「なんでこんなこと覚えなきゃいけないの?」「なんの役に立つの?」なんて思いながらイヤイヤやらされる勉強ではなくて、「どういうことだろう?」「もっと知りたい?」と自ら探求して、また周りと議論しながら勉強できるなんて最高じゃないですか。
海外の大学へ進学しやすい
これは本人にその気があって経済的に余裕がある場合の話になりますが、海外の大学へ進学しやすいというのもやはり大きなメリットですね。
国際バカロレアのデメリット
英語で授業を受ける
「日本語ディプロマ」の認定校であっても、英語ともう1つの科目(たとえば芸術など)は英語で受講しなければなりません。
意外となんとかなるのかもしれませんが、ついていけるだろうか・・・と不安な部分ではありますよね。
学費が高い
文部科学省はグローバル人材を育成するために、国際バカロレア認定校を増やしたいようです。
ですが、まだまだ認定校の数は少ないのが現状です。
2019年7月の時点で、認定校は46校 候補校は12校
多いのはやはりインターナショナルスクール。そして私立高校です。
ただ、最近は公立高校でもバカロレア認定校がほんの少しだけ増えてきたようです。
日本の大学の一般受験は難しいかも
通常の高校とバカロレア認定校のカリキュラムはまったくちがうので、日本の大学を一般受験するなら自分で必要な教科を勉強しなければなりません。
さきほどのインタビューにもありましたが、国際バカロレアのプログラムは課題がとても多く、毎日大変なんです。
ディプロマ取得を目指しながら独学で一般受験用の科目を勉強するのは容易なことではありません。
バカロレア認定校に行くなら、海外の大学、あるいは日本の大学でもディプロマを活用して入学できるところを狙うことになるでしょう。
日本の大学については現在のところ間口はあまり広くありませんが…
ただ、一条校のバカロレア認定校でディプロマを取得し、ディプロマを使わずに「指定校推薦」で日本の大学に進学した人はいるようです。
先生の技量や卒業生の進路がまだわからない
インターナショナルスクールはバカロレアの歴史も長いので問題ないかと思いますが、もともと日本の高校で最近新たにバカロレア認定校となったようなケースでは、先生の指導力がどうなのかな?大丈夫なのかな…?という不安があります。
卒業生がどれくらいのレベルでどういう進路に進む人が多いのか、など情報が少なく評価が定まっていない中で判断しなければなりません。
もちろん、探求型の教育という点では他にはない魅力があるので、バカロレア認定校に行っても意味が無いとまでは言いません。
情報を集めて検討し、最終的には本人の意思を尊重して決めるのが、後悔や失敗の無い選択になるのだろうなと思いました。