Eテレで2019年9月28日放送の「ウワサの保護者会」
テーマは「校長先生 中学校を変える」
※再放送は10月5日(土)午後0時30分~
「特別編」ということで、尾木ママと司会のアナウンサーが世田谷区立桜丘中学を見学に行くというスタイルでした。
世田谷区立桜丘中学、型破りな校長先生の型破りな中学として今とても注目されているそうなんです。
こんな中学校が増えればいいのに。。。
校則なし!服装自由、授業中に出て行くのも自由
今回のテーマは「校長先生 中学校を変える」ですから、主役は校長先生です。
桜丘中学の校長先生は西郷孝彦さんという方。
西郷校長は、10年かけて学校を作り替えてきたそうなのですが、なんと「校則をなくす」という大改革をされたんです。
服装はもちろん自由。髪型やアクセサリー、お化粧も自由。
それだけではなく、授業時間に教室から出て行くのも自由だし、授業中にスマホでゲームするのも自由。
それって学級崩壊じゃないの!?というレベルです。
番組では、髪を染めたり、ピアスやお化粧をしている生徒さんも写っていたけど、服装が自由なのでいわゆるヤンキーとか不良って感じではなく、おしゃれな若者って感じでした。
そして不思議なことに学級崩壊とか、学校が荒れているという感じではないんです。
生徒さんたちは「校長先生はおもしろい」「校長先生はいい人」と話していて、休み時間には校長室に遊びに来てギターを弾いたりおしゃべりして過ごしています。
そして校長先生はニコニコしながら生徒の会話に入っています。
すごく不思議な光景です。
校則を廃止した理由
10年前、西郷校長がこの中学校にきた当時は、ものすごく荒れた中学校だったそうです。
それこそ不良や言うこときかない子がたくさんいる状態。
この子たちはパワーがありあまっている。
いっぱいパワーを持っているので押さえつけても無理だろうな、と思ったそうです。
そこで、ルールで縛るのではなく解き放つことで「考える力」を伸ばそうということになったのだとか。
とはいえ、ルール無しで完全に自由にしてしまうと、もっと悪い状況になる恐れもありますよね。
「不安はなかったのですか?」というアナウンサーの問いに、
西郷校長は「大人が待つことができるかどうかです」と答えていました。
何年かかるかわからないけど、待つことができれば不安はない。
待てないから不安になる。
ホントおっしゃるとおりです。
待てないんです。そして不安になって結局子どもに厳しくしてしまうんです。
わたしのこと言ってるのかと思いました。
校則がない中学校なんて成立するの!?
小学校では服装は自由のところもありますが、時間に関してはルールがたくさんあって、決められたルールを守らなければ先生にしかられるというのが当たり前になっていますよね。
なので、子供たちは桜丘中学に入学してすぐ、つまり1年生のうちは大人を試すような行動をするそうです。
たとえば、
- 授業中にゲームをする ⇒ 本当にぜんぜん注意されない ⇒ そのうちやめる
- 授業にも出なくていいなんてウソだろ、絶対怒るだろう ⇒ 授業中に教室から出ていく ⇒ まったく怒られない ⇒ それに飽きてくるともうやめる
「好きにしていいよ」の中で一体何を本当にすればいいのか、何が正しいのか自分が何がしたいのか、それがだんだんわかってくるそうです。
「だから安心して見ていられる。1年生が今ぐちゃぐちゃになっていても来年はちゃんとしているとわかってるから誰も焦らない」と校長。
1年たてば落ち着いてしっかりしてくるというのがわかっていれば、待つことができるかもしれません。
でも最初に校則を廃止した瞬間は、この先子供たちが落ち着いてしっかりしてくるかどうかわからなかったと思うので、やっぱり校則をなくすと決断できたのはすごい勇気だなーと思います。
校則がないことを生徒はどう思ってる?
校則がないことを生徒さんたちはどう思っているのかインタビューしていました。
時々自由を勘違いしている人がいる。けじめをつけなければならないと私は思う。
ルールが厳しいところよりもここの方が僕は厳しいと思う。難しい。
そっか、そういうことか!とハッとしました。
意味の分からない理不尽な校則でがんじがらめにすると反発したくなりますが、ある程度ルールを決めておいてもらった方がラクな場合もありますよね。
それに従っておけばとりあえずOKなわけですから。
でもルールがまったくない、完全に自由となると、全部自分で考えて自分で判断することになります。
これは確かに「難しい」と感じる子も多いでしょうね。
自由には責任がともなうということにも気づいているのかもしれません。
そこが校長先生の狙いなんでしょうね。
インクルーシブ教育とは?
桜丘中学では、職員室前の廊下で勉強してる子が何人かいました。
廊下に小さな机といすが何セットか設置されてるんです。
これ、教室に入りづらい子、自分のペースで勉強したい子、小学校の時いじめられて不登校だった子などが学校に来やすいように、教室以外でも勉強できるようになっているんです。
廊下に机といすを置くだけですよ。
誰か担当の先生がつきっきりで面倒を見るということでもなく、みんなそれぞれ自習したりパソコンで作業したり。
たったこれだけで、救われる子が何人もいるんです。
職員室の前の廊下というのがポイントかもしれません。
先生全員でゆるく見守る感じでしょうか。
桜丘中学は「インクルーシブ教育」を進めているそうです。
障害、国籍、性差などにかかわらず様々な子供が共に学べる環境を整えた教育
「みんなと違っていていい、と言うより違っている方がいい。
自分はなんでできないんだろうなんて考えなくていい。わたしはわたし。これがわたし」と西郷校長。
教室に入れなくても良い。
その子が持っている才能をどうやって伸ばしていくか、先生たちが一生懸命考えているそうです。
たとえば、帰国子女の生徒さんは英語の時間に図書室で自習していました。(英語の授業を受ける意味ないですからね)
学校内でボランティア活動を頑張っている子もいます。
日本の学校は目立っている人はダメと言う雰囲気を感じるけど、この学校はそういうのが少なくて校長先生がすごく協力してくれるので(ボランティア)活動がしやすいです
いま桜丘中学には編入を希望する親子がたくさん訪れているそうです。
1年生190人のうち半数近くが学外からの通学なのだとか。
他の先生たちはどう思ってるの?
型破りな校長の型破りな学校を他の先生たちはどう思っているのか、インタビューしていました。
その中で、他の学校から転任してきた先生の話が印象的でした。
校庭で遊んでいる子たちがいたので「雨が降っているから中に入りなさい」と放送したら怒られた。「そんな事は子供たちが自分で考えればいい。そんな考えは古い」と。
桜丘中学の常識と、日本中の他の中学校の常識はまったくちがいますからね。
そのことをよく表しているエピソードだなと思いました。
校長先生は他の先生たちにこのように話しているそうです。
自分が教員だとか自分が大人だとか、自分が男性だとかそういう殻を全部剥ぎ取って素の人間で子供たちと接しなさい。すると深い人間関係ができてそれが面白い。
「子供たちには愛情を持って接しなさい」といっても、その愛情がよくわからない先生がいて、いまいち伝わらないのだそうです。まだ子供がいない先生は特にそうかもしれませんよね。
そういう時は「誰でもいいから自分が1番心配な子にすべてのエネルギーを1人の子に注いでみなさい」
「どうにかしてその子をなんとかしようとエネルギーを注いでいるうちにこれが愛情だとわかる」と説明するそうです。
日本に足りないのは「多様性」を認め合うこと
西郷校長は多様性を重視しているんですね。
こんなことも語っておられました。
大切なのは、教室で普通に受験勉強しているこが、そういう子を差別したりしないと言うこと。あの子はああいう生き方なんだとちゃんと認めている。
「なんでお前だけ」と言うような事は絶対に誰も言わない。
多様性を認め合う。日本に足りないのはそこ。
尾木ママのコメント
そういう教育は、いわゆる「一斉教育」では無理で、「個別教育」でないとできないのかと思っていた。でもそれが実現できていて驚きました。
そうですよね。
集団が苦手な子や発達障害のある子は、家庭学習やフリースクール、特別支援学級など「別のところで」というのがなんとなく当たり前のような感じがしていました。
そうでないと無理というか、その方が本人にとってよいのだろうと。
むしろ、教室でみんなで授業を受けるのが難しい子を「別のところへ」と考えるのは、「異質なものを排除すること」「均質主義」と言えます。
これは排除される側だけでなく、「均質な子」として残された側にとっても不幸なことなのではないかなと思いました。
世の中にはいろんな人がいて、いろんな考え方やいろんな特性、いろんな得意なこと・苦手なことがある。
それを知るチャンスを逃していることになりますし、自分もはみ出すようなことをすれば排除されるわけですから息苦しさを感じるのではないでしょうか。
桜丘中学校には「いじめ」はないの?
「いじめ」というのは、大人には気づかれないように巧妙におこなわれるものもあるでしょうし、実際のところ桜丘中学にいじめがあるのかどうかはわかりません。
ただ、小学校でいじめられて不登校だった子や、発達障害があり対人関係が苦手な子が、「ここはみんな優しい」「ここはいい人ばかり」と話していたのは印象的でした。
わたしのこれまでの感覚として、自分が抑圧されて不自由な人ほど「こうあるべき」「自分もガマンしてそうしているのだから」という考えにとらわれて、そこにあてはまらない人を非難したり攻撃する傾向があるように思います。
桜丘中学ではみんな自由。自分がどうふるまうかは自分で決めていいんです。
自分の自由が認められているからこそ、他者に対しても「あなたはそうしたいのね。ならそれでいいんじゃない?」という感覚でいられるのではないかな…と勝手に想像しました。
桜丘中学の西郷孝彦校長の経歴
それにしても、西郷校長の忍耐力と包容力、そしてリーダーシップには驚きました。
どういう経歴の先生なんだろう・・・と興味が湧いて少し調べてみたところ、もともとは養護学校(今の特別支援学校)の先生だったんですね。
それでインクルーシブ教育。
きっと特別支援学校で教えていたときに、いろいろと思うところがあったんでしょうね。
ほんの少しの配慮で問題なくみんなと一緒に授業が受けられるのに・・・とか、
こういう環境なら無理なく学校に通えるのに・・・とか。
特別支援学校で培った経験をうまく活かして学校の大改革に成功したんだな、と理解できました。
学校改革は校長先生しだい?
公立の学校って、ブラックな職場というイメージが強いし、とても子供のことを考えているとは思えない集団主義的な教育、話の通じない先生など「なんだかなあ・・・」と感じることが正直多いです。
先週放送された麹町中学校の校長先生もそうですけど、本当にすばらしいと思いました。
まず理念がすばらしいです。
ただ、素晴らしい理念だと頭ではわかっていても、実際それができるかというと普通は難しいものですよね。
まず子供たちの変化を忍耐強く待ってやることができないし、きっと周りからあれこれ言われて最初は正しいと思っていたことでも自信をなくしてしまうこともあるでしょう。
教員や保護者からの反発もたくさんあったのではないかと思います。
東京など都市部では、公教育に見切りをつけて中学から私立にいく子が非常に多いと聞きます。
そんな中で、公立の中学校でも校長先生が強い信念とリーダーシップを持って実行すれば、ここまで型破りで素晴らしい学校に改革することができるのだと驚きました。
もう公立中学は終わった感が強かったけど、なんだか希望の光が見えてきたような気もします。
桜丘中学には全国の学校から先生たちが視察に来られているようです。
生徒を均質に押さえつける教育の限界を認め、このような多様性を認め合う教育が広がっていけばいいなと思いました。