NHKで2019年10月21日(月)放送のストーリーズ事件の涙「170枚の日々をたどる~仙台母子心中事件~」を観ました。
「仕事を辞めてでも一緒にいてあげるべきだった」と絞り出すような声でつぶやいて涙を流しておられたのが印象的でした。
気になる点はいくつかあったのですが、わたしが特に注目したのは「30日以上の欠席日数」のくだりです。
いじめ防止対策法の関係で、欠席日数が30日以上かどうかによって、いじめ問題の取り扱いが大きく変わってくるようなのです。
仙台母子心中事件の概要
2018年11月に起きた「仙台母子心中事件」は、小学校2年生の女の子がいじめを苦に学校に通えなくなり、心配したお母さんが学校に何度も相談したものの最終的には精神的に追い詰められて娘の首を絞めて殺し、自分も首吊り自殺したという事件です。
両親がいじめに気がついたのは2018年5月。
女の子は同級生たちと一緒に登校していたのですが、そのうちの1人から朝顔の支柱で叩かれそうになったり、登校する際に何度も置いていかれたり、「あれ取ってきて」などと家来のように扱われていました。
学校に相談すると、担任の先生は女の子と加害者の児童を集めて握手をさせる「仲直りの会」を開きました。
まったく納得できていないまま無理やり握手をさせられた上に、その後も同級生から無視される、ヒソヒソ話をされるといったいじめが続き、女の子は学校に行けなくなり「しにたいよ・・・しにたいよ・・・」と手紙に書くほどに。
仕事で遅く帰るお父さんに状況を伝えるために、お母さんは、女の子の様子や学校にどのように対応されたかなどを、毎日詳しく記録していました。
170枚にものぼるその記録には、学校に対策してもらうよう相談を繰り返し、あきらめた経緯がつづられていました。
学校は欠席日数をごまかしていた!?
番組の後半で、お父さんが記録と照らし合わせながら娘の欠席日数を調べるシーンが出てきます。
教育委員会から受け取った通信簿には2学期の欠席日数がまったく記載されていませんでした。
学校につき返し、きちんと記入してもらったところ、お母さんの残した記録では「学校を休んだ」となっている日が出席扱いになっているなど一致しない・・・
というシーンなのですが、お父さんがなぜ必死になって欠席日数を調べているかというと、欠席日数が「30日以上」となるかどうかで、いじめの取り扱いが変わってくるからです。
また、番組には出てきていませんが、事件後の報道によると、当初は「14」と記載されていた1学期の欠席日数が「12」と訂正されていたそうです。
2学期と欠席日数「16」とあわせると、訂正前は30日、訂正後は28日。
参考
<仙台母子心中>学校が欠席日数訂正 「遺族の疑念は当然」市長、市教委に説明促す河北新報
お父さんは「30日以上にならないよう故意に日数を操作した」と不信感を募らせます。
いじめ防止対策推進法の「重大事態」とは
いじめ防止対策推進法には、学校がいじめの防止・対処のために実施しなければならないことが定められています。
教師や保護者から「いじめの事実があると思われる」と通報を受けたとき、学校は次のようなことを実施しなければなりません。
- いじめの事実の確認をおこない、その結果を設置者(教育委員会や自治体)に報告する。
- いじめをやめさせる。
- 再発防止のために被害者の児童と保護者に継続的な支援をおこなう。
- 加害者の児童への指導、加害者の保護者への助言を継続的におこなう。
- 被害者が安心して教育を受けられるようにする(加害者を別室で学習させるなど)
- いじめが犯罪行為である場合は警察と連携する
さらに、「重大事態」にあてはまるいじめについては、第三者委員会を設けた上で事実関係を明らかにするための調査をしなければなりません。
「重大事態」というのは、次のいずれかに該当する場合です。
- いじめにより生命、心身または財産に重大な被害が生じた疑いがある。
- いじめにより相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがある。
②の「相当の期間」の目安は年間30日以上とされています。
欠席日数が30日以上になると学校は困るの?
学校がいじめの相談を受けてから、欠席が年間30日以上になれば「重大事態」に該当します。
「重大事態」に該当すれば、学校または学校の設置者(教育委員会や自治体)が第三者委員会を設置して調査をおこなわなければなりません。
専門家を集め、子供たちにアンケートを実施し、自治体の長に報告しなければならないのです。
つまり、学校にとってはすごく面倒な大ごとになってしまうということ。
学校の前まで行っただけで出席扱いに
実はうちの子も、いじめではない(と思う)のですが学校を休みがちだった時期があり、担任の先生が欠席日数にこだわっていたのを覚えています。
学校の前まで送っていったけど嫌がって車から降りないため、わたしが職員室へ「今日も休みます」と伝えに行くと、「敷地内まで来てくれたから出席にしておきますね」などとよく言われました。
後で知ったのですが、病気やケガなどの理由以外で欠席が30日以上になると、「不登校」として学校が対策を講じなければならないそうですね。
このように、30日以上の欠席ついて学校が特別な対策をしなければならないと定められているのは、授業を受けられない状態が長く続くのはよくないから早急に対応が必要という意味なのかな・・・と想像するのですが、そうだとしたら敷地内に入っただけで出席扱いってどうなんですかね。
なんにも授業を受けてないのに。
うちの子が休みがちだった時期、「学校の前まで来るだけでもいいよ」とか「とりあえず保健室に来てみてダメならすぐ帰ってもいいよ」と声をかけてくださったのは、子供のためを思って言ってくださっているものとばかり思っていましたが、この欠席日数のルールを知ると「30日以上になると面倒だから嫌だったのかな・・・」と疑ってしまいます。
まあでも、うちの子のケースは別にいいんです。
いつの間にか学校に行けるようになりましたし、「不登校」として何か対策を望んでいたわけでもありませんし。
ただ、いじめで学校に行けないケースでは、この「30日ルール」はもう少し厳格にカウントしてもらいたいところです。
仙台母子心中事件のお母さんが30日ルールを知っていたら・・・
被害者側からしてみたら、第三者委員会の設置など「大ごと」に発展させてでも、早くいじめ問題を解決してほしいと思うんです。
それなのに保健室に入っただけ、学校の前まで行っただけで出席扱いにされて、なかなか30日にならないのは納得できないのではないでしょうか。
というか、いじめによる欠席日数が30日以上になると「重大事態」として第三者委員会が設置されるということを知らずに、学校側に勧められるまま保健室登校をしているケースも多いのではないかと思ってしまいました。
いじめを受けていた女の子は、教室に入れなくて校長室で勉強していたそうです。
お母さんは学校側に強く対策を求めていたのですから、早く対策してもらうためには校長室に登校させたりせず、毎日休ませれば良かったということですよね。
いじめによって年間30日以上欠席すると「重大事態」として第三者委員会が設置されるという情報は、もっと広く知られるべきではないかなと感じました。