「うつ抜け精神科医が教える心が折れない子を育てる親の習慣」を読みました。
子供にはいろんなことをがんばってほしいけど、がんばりすぎて心が折れてしまう子も増えていると聞きます。
「心が折れない子を育てる」ってどうやるの・・・?と興味津々で読んでみました。
「母原病」って知ってますか?
著者は精神科医の宮島賢也さん。
ご自身のお母様がかなりの教育ママで、子供の頃からしんどい思いをされたようです。
包丁をもって追いかけまわされたというエピソードも出てくるくらいで、ハードな体験をしておられます。
小学生のころの体験が原因で、研修医時代に7年間うつを患ったとのこと。
そして現在、精神科医として「しんどさ」を抱える子供をたくさん診察しておられます。
メッセージとして書かれているのは主に次のようなことです。
先回りしてかまいすぎるな
「母原病」という言葉があるそうです。
この字のままですが、母親の育児が原因で子供の病気や問題を引き起こしてしまうことをいいます。
母が病気の原因だなんて随分な言い方だな。。。と一瞬思いましたが、少し前に「母が重くてたまらない」という本が流行りましたよね。
母原病の指す「母」は、子供を虐待するとかひどい仕打ちをする母親ではなく、子供を愛しています。
でも、子供を囲ってしまうような愛し方に問題がある母親です。
常に母親が先回りして子供の問題を排除したり解決していると、生きる力が弱い子になるのです。
要するに過保護です。
親が先回りしてなんでも決めてしまったり、それしか選択できないような提案の仕方をしているケースなども過保護になるといいます。
「どうするの?」と子供に問いかけながら、実は「こちらを選ぶべきだ」というのは自分の中にあって、暗にプレッシャーをかけていたり。
「もう勝手にしなさい」と言いながら本当に好き勝手しているとさらに怒るとか。
やってしまってますね。
また、子供へのアドバイスは少なめがおすすめなのだそうです。
アドバイスは少なければ少ないほど、子供が自分の人生を生きる喜びにつながる、と。
ついつい自分の経験から「こういうことはやっといた方がいいよ」などと言ってしまいがちです。
むしろアドバイスはたくさんしてあげた方が良いと思っていたくらいなので、これは知れてよかったです。
子供から自分の人生を生きる喜びをどんどん奪ってしまうところでした。
子供にばかり意識を向けるな
自己犠牲は良くないというのはいろんなところで言われていますよね。
自分を犠牲にして「子供のためだから」と行動すると、子供はそれをとても窮屈に感じる。
そしてその窮屈さは連鎖する、という話です。
子供自身が将来自分の子供を育てるときに
「自分は楽しんではいけない」「すべて子供を優先させなければならない」と思うようになってしまうんです。
親が自分の人生を楽しめばよい
子供は親のやっていることに大きく影響を受けます。
親がつまらなそうに、しんどそうに人生を生きているのに、子供に良い人生を送ってほしいと願っても説得力がありません。
親が自分自身を大切にして、日ごろから楽しんで生きていると、それは必ず子供に伝わります。
他にもこの本には、子育てする中でぶつかる壁について、たくさん参考になることが書かれていました。
中でも、一番重視されているのが「満月理論」という考え方です。
「満月理論」とは
満月理論は、宮島医師のクリニックにおける治療の土台となる理論です。
あたりまえですが、「三日月」という月は存在しませんよね。
本当はまん丸だけど、光のあたり具合で三日月に見えるだけ。
これを人間に置き換えて、人は誰でもまん丸で完璧な存在だと捉えるんです。
「この人は嫌い」とか「この人はこういう人だから…」というのは自分がそう認識しているだけで、本当はまん丸で完璧。
子供に対しても「満月」「完璧な存在」として接していこうというわけです。
わたしたち親は、どうしても子供の「できていないこと」に目が行ってしまいがちですよね。
- 消極的なところが気になる。もっと活発になってくれればいいのに…
- なんでこんなに注意散漫なの?もうちょっと慎重にできないのかしら…
- あまり頭が良くないから、もっと勉強させないと…
これは子供を三日月と捉えていることになります。
子供はもともと満月。みんな完璧な存在だと捉えるんです。
だって、注意散漫なのは事実だし。あれだけ言ったのにまた出しっぱなしで・・・とか。
とてもじゃないけど完璧だなんて思えません。
子供の美点を100個書き出す
そんなときは、「美点発見」という方法があります。
やり方は簡単。
紙に子供の美点を100個書いていくだけです。
- 思いつくまま書く
- 同じようなことを繰り返し書いてもOK
- 心からそう思えなくてもとりあえず書く(書いているうちに後からそう思えるようになる)
- 「よく食べる」とかささいなことでもOK
社交的、笑顔が良い、やさしい、おおらか、背が高い、よくしゃべる、かわいげがある、友達と仲が良い、自分の好きなものがはっきりしている、人に合わせることができる、素直、妹にやさしい、動物好き、絵が上手、スポーツを頑張っている
子供の良いところはたくさん知っているつもりだったので、ひねり出したら100個くらいいけるのでは?と思っていましたが、ぜんぜん出てきませんでした。
実際、100個も美点を発見できたらすごいことなのだそうです。
一度に100個が無理なら、毎日少しずつ書き足していってもOK。
こうして子供の美点を書き出しているうちに、子供の「できていない部分」「ダメな部分」ではなく「良いところ」に意識が向き始めます。
すると、その一部が言葉として出てきて、言葉に出れば行動も変わる。
つまり、できていないことにばかり目が行って、ついつい小言ばかり言っていたのが、「あなたのこういうところがとってもいいよね」「すごいよね」という風になってくるわけです。
やってみてなんとなくわかったのですが、今まで「中3なのになんでこんなに勉強しないの!?」と長男の姿を見るたびイライラしてしまっていたのが、美点をたくさん書き出して「満月、満月」と意識することによって、
「勉強なんてこの子のごくごく一部に過ぎない。それよりこの子はやさしくておおらかで、人から好かれる良い点がいっぱいある!こんないい子に育ってるじゃん!」
と思えるようになってきたんです。
そうなってくると、学校の勉強なんてそんな些細なことでイライラしていたのが少しバカらしくも思えてきます。
この満月理論。本当にちょっとしたことなんですが、子供に対する自分の意識が確実に変化するし、余計なイライラがなくなり自分の精神にも子供の精神にも良いのでおすすめです!
だまされたと思って、今からお子さんの美点を100個紙に書き出してみてください。
きっと何かが変わりますよ。