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グレタ・トゥンベリさん「TEDx ストックホルム」でのスピーチ【全文】

国連の温暖化サミットにおける「怒りのスピーチ」で話題になったスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(16歳)。

「生態系が破壊され大量絶滅の始まりにいるのにお金や経済発展の話ばかり」「よくもそんなことを」「裏切るなら絶対に許さない」など感情的に強く非難する様子が大きく報道されるとともに、グレタさんの主張に反発する意見も見かけました。

たとえば、

  • 根源的な問題は人口が多すぎること。CO2排出量を減らすために人間を間引きするのか?
  • 自分が経済的に恵まれていることを棚に上げて経済を批判するのは偽善だ。
  • 人類の時代が終わったら次の種が食物連鎖の頂点に立つ。人類の時代はほんのわずか。


参考
「気候正義」は正義なのか?BLOGOS

ですが、2018年11月におこなわれた「TEDx ストックホルム」でのスピーチを見て、グレタさんの主張には納得できる。むしろ反論の方がちょっとズレているのでは?と感じました。

「TEDx ストックホルム」でのスピーチはいたって冷静。
彼女の主張をきちんと知りたいという人は、こちらのスピーチを見た方がいいです。

グレタ・トゥンベリさん「TEDx ストックホルム」でのスピーチ【全文】

 

8歳ぐらいの頃に、わたしは気候変動や地球温暖化のことを初めて耳にしました。
それは人間の生活様式がもたらしたものらしいのです。
省エネのために電灯を消したり、資源を守るため紙をリサイクルするようにと教えられました。
人間は他と同じ動物の一種にすぎないのに地球の気候を変える力があるというのはとても変だと思ったのを覚えています。

だって人間にそんな力があって気候変動が本当に起こっているなら、他のことは話題にもしていないはずですから。
テレビをつけたらそのことばかりのはずだし、ニュースでもラジオでも新聞でも、まるで世界大戦が起こっているかのように、それ以外のことは見聞きしないはずです。
でも誰もその話をしていません。

化石燃料を燃やすことが私たちの生存を脅かすほど悪いことなら、なぜ前と変わらない生活をしていられるのでしょう?
なぜ何の制限もないのでしょうか?
なぜ違法なこととされないのでしょうか?

わたしは納得できませんでした。
あまりにも非現実的でした。

それでわたしは11歳のとき病気になりました。
うつ状態になり話さなくなり、食べなくなりました。
2ヶ月で10キロやせました。

後にわたしはアルペルガー症候群で強迫性障害で選択的無言症だと診断されました。

MEMO

※強迫性障害=自分の意思に反して、不合理な考えやイメージが頭に繰り返し浮かんできて、それを振り払おうと同じ行動を繰り返してしまう病気

※選択的無言症=家族や親しい友人とは話せるのに、学校や知らない人など、特定の状況下では沈黙してしまう障害

その症状は基本的に必要だと思う時しか話さないことで、今がその必要な時なのです。(会場笑いと拍手)

わたしのような自閉症スペクトラムに属している人間にとっては、ほとんどすべてのことが白黒どちらかなのです。
わたしたちはウソをつくのがあまり上手ではありません。
ソーシャルゲームをしても大抵は楽しくありません。
皆さんはお好きなようですが。(会場笑い)

わたしにはいろんな意味で自閉的な人間の方が正常に思え、他の人たちはすごく奇妙に見えます。(会場笑い)
特に、持続可能性の危機の話となると、気候変動は生存を脅かしていて何より重大な問題だとみんな言い続けていながらこれまでと変わらない生活をしているのです。
これは理解できません。

排出をやめる必要があるなら、やめるべきだからです。
わたしにとって、これは白か黒かの問題です。
生き残りの問題とあんればグレーな部分はありません。
文明を継続するのかしないのかです。

わたしたちは変わる必要があります。

スウェーデンのような裕福な国は、少なくとも年15%の排出削減を開始する必要があります。
気温上昇を「2度未満」に抑える目標のために必要なことです。

もっとも、IPCCが最近発表したように「1.5度未満」を目標にしたほうが、気候による影響を大幅に減らせるそうですが、排出削減にそれがどういう意味を持つのか想像することしかできません。

MEMO

※IPCC=国連気候変動に関する政府間パネル。国際的な専門家でつくる、地球温暖化についての科学的な研究の収集、整理のための政府間機構

メディアやすべてのリーダーがこの話ばかりしていると思うかもしれませんが、口にすることさえありません。
温室ガスが自然界にすでに取り込まれていることも誰も口にしません。

大気汚染が気温上昇を隠していて化石燃料を使うのをやめたとしても0.5度から1.1度もの追加の温度上昇要因があることも言わないのです。

さらに私たちは第6の絶滅記の真っ只中にいるという事実も、ほとんど誰も語っていません。
200もの種が毎日絶滅していて、現在絶滅が起きているスピードは、正常と考えられる状態とくらべ千倍から1万倍も早いのです。

パリ協定のあらゆる箇所で明確に宣言されているにも関わらず、衡平性(つりあいが取れていること)や気候正義についてほとんど語られていません。

これは世界的な規模で効果を生むために絶対不可欠なことです。

つまり裕福な国は、今の排出ペースだと6年から12年のうちに排出をゼロにする必要があるということです。
それによって貧しい国の人々が、わたしたちのすでに作り終えている道路や学校や病院や水道や電気といったインフラを整え、生活水準を高める機会が得られるようにするためです。

インドやナイジェリアのような国が気候危機を気にかけるとどうして私たちに期待できるでしょうか?
すべてが整っている裕福な国の私たちが、気候やパリ協定を守ることを少しも気にかけていないのにです。

ではなぜわたしたちは排出を減らさないのでしょうか?
なぜ実際排出はまだ増え続けているのでしょうか?
知っていながら大規模な絶滅を起こそうとしているのでしょうか?
わたしたちは邪悪なのでしょうか?

もちろんそうではありません。
みんながこれまで通りのことを続けているのは、わたしたちの日常生活がどんな結果を引き起こすのか、大多数の人がまったく知らず、速やかな変化が必要なことを知らないからです。

私たちは誰もがみな知っていると思っていますが、知らないのです。
どうして知ることができるでしょう?

もし本当に今が危機的状況で、その原因がわたしたちの排出するものにあるのなら、少なくとも何か予兆があるはずです。
水没する都市や何万もの死者。
倒壊した建物で埋もれていく国々なんかだけでなく、何らかの不自由が出てくるはずです。
でもそうなってません。
しかし誰もそのことを言いません。

緊急会議も見出し記事も緊急速報もなく、誰も危機の最中にいるような行動を取りません。
気候科学者や環境派の政治家でさえ、多くの人は飛行機で飛び回り、肉や乳製品を食べ続けています。

わたしが100歳まで生きるとしたら、2103年にまだ生きています。
将来のことを考えるとき、みんな2050年以降のことは考えません。
順調なら、その時点でわたしはまだ人生の半分も生きていません。

その先、何が起こるのでしょうか?
2078年には、わたしは75歳の誕生日を迎えます。

子供や孫がいたらその日をともに過ごしてくれるかもしれません。
皆さんのことを聞くかもしれません。
2018年ごろに生きていた人たちのことを。

まだ行動を起こせる時間があったのに、なぜ何もしなかったのかとたずねるかもしれません。
今すぐ行動するかどうかが、わたしの全人生と、子供や孫の人生に影響するんです。
今すぐ行動するかどうかでもたらされる結果は、将来のわたしやわたしの世代にはどうすることもできません。

だから今年の8月に学校が始まったとき、ガマンできなくなって心を決め、スウェーデン議事堂の前で座り込みをしました。
気候のために学校ストをしたのです。

学校に行くべきだという人もいるし、勉強して気候科学者になり「気候危機を解決」したらいいという人もいます。

でも気候危機はすでに解決されているんです。
すべての事実と解決策はすでにそろっています。
あとは目を覚まして行動を変えさえすればいいだけです。

将来を守るためのことを誰もしていないのなら、もはや無くなる将来に向けてなぜ勉強すべきだといえるのでしょうか?

そして教育システムが生んだ最優秀な科学者による最も重要な事実が政治家や社会にとって明らかに何の意味も持たないのなら、その同じ教育システムで事実を学ぶ意味はあるのでしょうか?

スウェーデンはただの小さな国だから何をしても意味が無いという人もいますが、子供が何人か数週間学校に行かないだけで世界中の見出しを飾れるのだとしたら、みんなでその気になって行動したら何ができるか想像してみてください。(拍手)

 

そろそろこのトークも終わりです。
普通ならみんなここで希望について語りだします。
太陽光パネルだとか風力発電だとか循環経済だとか。

でもわたしはそうしません。

励ましやら明るいアイデアなら30年聞かされてきました。
残念ながら効果はありません。
効果があったら今頃排出問題は解決しているはずです。
でも解決していません。

確かに希望は必要です。
もちろん必要ですが、希望よりも必要なのは行動です。
行動を始めれば希望であふれます。
だから希望を探すのではなく行動を求めましょう。
そうやって初めて希望がわくのです。

現在、1億バレルの石油が毎日使われています。
これを変える政策はありません。

石油を地中に残しておくルールはありません。
既存のルールに従っていては世界を救えないのです。
ルールを変えなければならないからです。
すべてを変える必要があります。

そして今日始める必要があるのです。
ありがとうございました。




グレタさんへの反論のどこがずれている?

さて、グレタさんのスピーチを聞いて、どう思われましたか?

わたしはまっとうな主張だと感じました。

もちろん、グレタさんのようにストイックに牛肉を一切食べないとか、飛行機に乗らずヨットで外国へ行くといったことまではできませんが、少なくともグレタさんの主張を批判したり反論しようとは思いませんでした。

冒頭で紹介した反論について、わたしが「ちょっとちがうのでは?」と感じたのは次のような点です。

根源的な問題は人口が多すぎること。CO2排出量を減らすために人間を間引きするのか?

これはずいぶんな極論ですし、グレタさんの主張のどこにそんなニュアンスが含まれているのかと驚いてしまいます。

グレタさんの主張は、目の前にできることがあるのになぜやらないのか?ということではないでしょうか。

緊急会議も見出し記事も緊急速報もなく、誰も危機の最中にいるような行動を取りません。
気候科学者や環境派の政治家でさえ、多くの人は飛行機で飛び回り、肉や乳製品を食べ続けています。

現在、1億バレルの石油が毎日使われています。
これを変える政策はありません。

また、新しい技術が出てきたら解決するはずだなんて楽観視せずに、目の前のできることを今すぐやるべきだと言いたいのではないでしょうか。

普通ならみんなここで希望について語りだします。太陽光パネルだとか風力発電だとか循環経済だとか。

 

でもわたしはそうしません。

励ましやら明るいアイデアなら30年聞かされてきました。
残念ながら効果はありません。

自分が経済的に恵まれていることを棚に上げて経済を批判するのは偽善だ。

グレタさんは、自分たちが(スウェーデンという国が)裕福であるからこそ、率先して取り組むべきだという趣旨のことを話しています。

裕福な国は、今の排出ペースだと6年から12年のうちに排出をゼロにする必要があるということです。
それによって貧しい国の人々が、わたしたちのすでに作り終えている道路や学校や病院や水道や電気といったインフラを整え、生活水準を高める機会が得られるようにするためです。

 

インドやナイジェリアのような国が気候危機を気にかけるとどうして私たちに期待できるでしょうか?
すべてが整っている裕福な国の私たちが、気候やパリ協定を守ることを少しも気にかけていないのにです。

人類の時代が終わったら次の種が食物連鎖の頂点に立つ。人類の時代はほんのわずか。

この反論者は、人類が滅亡したって別にいいじゃないか。そんなにムキになるなよ・・・と言いたいのでしょうか。

でもグレタさんはそれが嫌だから訴えているわけです。
数十年後の自分がまだ生きている時代、子供や孫たちが生きている時代に「あのとき行動しておけばよかった」と後悔したくないから今行動しよう!という話しです。

これはもう根本的な考え方のちがいなので反論というものでもないのかもしれませんね。
人類が滅亡してもいいというスタンスであれば、グレタさんの主張がどうこうではなく、国連の温暖化サミット自体無意味ですものね。

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