ゲーム依存症になったら自分の意思で抜け出すことは不可能です。
何度でも約束を破るし平気でウソをつくこともあると思います。勉強や友人関係、家族関係に重大な問題が出ていてもゲームをやめることができません。
本人の意志が弱いとか、ダメ人間ということではないんです。ゲーム依存症は病気なんです。
依存症の本を読んでしっくりきた表現があります。
強い意志でガンを治せと言っても無理であるのと同じように、強い意志で依存症を治すことはできない
自分で抜け出すことは不可能なので、治療を受けなければなりません。
とはいえ、ガンのように手術や投薬で治療する病気ではありません。
ゲーム依存症の治療とはどのようなものなのでしょうか。
ゲーム依存症の治療の難しさ
依存症を克服するには、とにかく依存対象から遠ざかることが大切です。
アルコール依存症ならアルコールを断つ。1滴も飲まない。
ギャンブル依存症ならギャンブルを一切しない。そのような場所に行かない。
それを毎日毎日積み重ねて行くんです。
依存症は治らない病気と言われています。
なので「完治」とは言わず「回復」という言葉を使います。
治ったのではなく「やめ続けることができている」という状態です。
長年アルコールをやめることができている人が、「もう大丈夫だろう」と少しでもお酒を飲んでしまうと、一気に逆戻りしてしまうんです。
他の人たちが息抜きとして楽しんでいるように「適度に楽しむ」ということはもう不可能です。だから一切やらない状態を続けるしかないんです。
これをゲーム依存症にあてはめると「スマホに一切触らない」ということになります。
小学生の子供なら、親が管理してゲーム機やスマホ、タブレットを一切触らせないことも可能でしょう。
でも、中学生、高校生になるとLINEをしていないと友達と連絡をとることもできません。スマホやタブレットを勉強に活用したりもするでしょう。
大学生になれば就職活動に必要ですし、社会人になれば仕事に必要です。
スマホやタブレットを一切触らない生活というのは現実問題として無理なんです。
小学生なら「ゲーム機やスマホに一切触らせない」という手も
先ほど、小学生の子供なら親が管理してゲーム機やスマホ、タブレットに一切触らせないことも可能だと書きました。
もちろん反発するでしょうけど、まだ親が管理できる年齢であれば、親が強い決意をもって「もうゲームは一切やらせない」「スマホやタブレットにも一切触らせない」というふうにしてしまうのも1つの方策だと思います。
「ゲームがなかったら友達と遊べない。仲間に入れない」なんて言われるかもしれません。
これだけ大好きでたまらないものを完全に取り上げてしまうなんて、自分はひどい親なのでは・・・と躊躇するでしょう。
できれば使用時間などのルールを決めて使わせてあげたいですが、それが無理だと判断したからこのような状況になっているのですよね。
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ゲーム依存症の治療方法(通院の場合)
ゲーム依存症を扱う病院に行った場合、どのような治療を受けることになるのでしょうか。
ゲーム依存症をはじめ依存症の専門病院として有名な久里浜医療センターでの治療方法を紹介します。
インテーク
診察の前に臨床心理士がヒアリング。
検査で現状把握
初診を含めて4回の診察で状態を把握。
血液検査やMRI、脳波、心理検査などを行い、発達障害やその他の精神疾患がないか調べます。
通院治療
個人カウンセリングやグループミーティング。
グループミーティングは、依存症の患者さんが集まって自分の体験や自分の考えを話していくものだと思われます。
これは古くからアルコール依存症の治療法として効果をあげてきた方法で、なぜだかわからないのですがこの手法で依存症から抜け出せる人が多いのです。
そのため、病院とは関係なく、全国に依存症者の自助グループ(当事者のグループ)がたくさんあり、あちこちで定期的にミーティングが開かれています。
もちろん1回グループミーティングに参加したら依存症が治るなどというものではありません。
定期的に何度も何度も参加しつづけるんです。
NIP(New Identity Program:新アイデンティティプログラム)
これは久里浜医療センター独自の取り組みで、ゲーム無しで過ごす楽しみを見つける活動です。
高齢者施設のデイケアみたいなもので、1日かけて次のような内容を行うそうです。
- バドミントンや卓球などの運動、美術、遊び
- 睡眠、栄養、依存、健康についてのレクチャー
- グループミーティング
- コミュニケーションの訓練(希望者のみ)
対人関係でのつまずきからゲームに逃避してしまう人が多いため、ゲーム依存を脱した後もまた対人関係でつまづいてゲームに戻ってしまわないようにコミュニケーションスキルをみがいておくことが大切なのだそうです。
参考
NIP(新アイデンティティプログラム)紹介久里浜医療センター
家族相談・家族向け勉強会
家族の関わり方がまずいとゲーム依存症を悪化させてしまったり、本人が途中で治療を拒否してしまうこともあります。
先ほども書きましたが、依存症の治療は長期間に及びます。
正しい知識を身につけて、適切にサポートしてあげられるようになるのが理想的ですね。
ゲーム依存症の治療方法(入院の場合)
久里浜医療センターの院長先生の話によると、入院治療はゲーム依存症に一番効果的なのだそうです。
久里浜医療センターの場合、入院は6~8週間とかなり長期間です。
この間、スマホやゲーム機から完全に遠ざかることができます。
入院には本人が同意が必要です。
入院中はこのような治療がおこなわれます。
- 睡眠サイクルを整える
- 毎日運動して体力をつける
- 依存症や健康の問題についてレクチャー
- 診察や検査
- 認知行動療法
認知行動療法とは
いわゆる「思考のクセ」「思考のゆがみ」を修正するものです。
同じ出来事がおきても、認知の仕方は人それぞれで、それによって行動も変わってきます。
たとえば、「街で偶然友達を見かけて遠くから声をかけたけど無視された」という出来事があった場合、「自分のことが嫌いなのかもしれない」と考えて落ち込み、次の日から「学校でその友達に会っても避ける」という行動を取る人がいたとします。
この人は、無視されたときに「自分のことが嫌いなのかもしれない」と認知したのです。
一方で、無視されても「聞こえなかったんだな」と考えて、次の日学校でその友人にあったときに「昨日○○にいたでしょ。声かけたんだよ」と話しかける人もいるでしょう。
この人は、無視されたとき「聞こえなかったんだな」と認知したのです。
出来事を悪い方へ認知してしまうと、落ち込んでつらい気持ちになってしまいますよね。
そこから、つらさをまぎらわせるためにゲームに没頭して・・・というパターンもありえます。
こうした考え方のクセを修正するよう促すのが認知行動療法です。
ゲーム依存症まではいかないけど問題を感じている場合は
はっきりと「ゲーム依存症」といえるほどひどい状態ではないものの、このまま行くとちょっと心配かも・・・という場合もありますよね。
親から見てちょっと問題があるなと感じる場合は、病院にまでは行かないにしても早めに何らかの対処をした方がいいです。
久里浜医療センターの院長先生が勧めている方法は次のようなものです。
これまで四六時中やっていたゲームを制限するので、本人にとってはつらいことですし頑張らないといけません。
手持ち無沙汰なときに周囲でゲームをしている人を見たりすると、つい上限時間を破って・・・ということもあるでしょう。
と言っても簡単には見つからないかもしれませんが・・・。
でも、親としていろいろ協力できることもあると思うんです。
「何かやってみたいことがあるならできるだけ協力するから言ってね」と声をかけておくのでもいいと思います。
そして、ギターを弾いてみたいとか、ペットを飼いたいとか、手品をマスターしたいとか、ダンスを習いたいとか・・・何かしらゲーム以外の楽しいことをやりたいという欲求が出てきたときに、できる範囲で協力してあげてほしいと思います。
お金がかかることだと厳しいものもあるかもしれませんが、「できる範囲で」協力を惜しまない姿勢が大切なのかなと思います。