新しい年度が始まり1つ学年が上がるとき、次はどんな担任の先生だろう?いい先生だったらいいけど…と不安になりませんか?
「担任ガチャ」なんて言われたりもするくらい、良い担任の先生にあたるかどうかで、子供の学校生活が大きく変わりますよね。
いま、クラスの固定担任制を廃止して学年担任制や全員担任制に移行する学校が少しずつ増えているんです。
麹町中学校がクラスの固定担任制を廃止した理由
クラスの固定担任制を廃止して注目されている学校といえば、東京都の麹町中学校。
宿題の廃止、定期テストの廃止、服装・頭髪指導の廃止など、さまざまな学校改革をおこなっている中学校です。
わたしは「林先生の初耳学」や「ウワサの保護者会」に出演されているのを観ました。
また、先日こんな本を購入して読んだところです。
この本に、クラスの固定担任制を廃止した理由が書かれていました。
理由1:医療の世界における「チーム医療」のように、子供に最適な対応をするため
麹町中学校では当初、主任と副担任の「2人担任制」を試したものの、それでは不十分だと感じたそうです。
なぜなら、何かクラスで問題が起きているとき、ベテラン教員が動けばすぐに解決できそうなことでも、主担任がいると他の担任は直接手を出せないから。
一般的な感覚では、まだ経験の浅い先生が主担任を受けもっている場合、経験豊かな先輩の先生が指導役として付いてサポートするようにしないと、先生が一人で勝手に急激に成長してできるようになるなんて無理なのではないかな・・・と思うんです。
でも「主担任には手出し口出しできない」という文化があるなら、経験の浅い先生がトラブルにうまく対応できなくて他の先生も助けてくれず困っている間にも次々と問題が起きるわけで、それって結局子供たちにしわ寄せが行くということですよね。
最優先すべきなのは子供たちの課題なのに、担任制のせいで問題が放置されるなどということがあってはいけない・・・ということで、クラスの固定担任制が廃止され、全員担任制(学年担任制)を導入することになったそうです。
理由2:うまくいかないことを担任のせいにせず、子供に当事者意識をもたせるため
また、副次的な効果として、うまくいかないことを担任のせいにせず、子供に当事者意識を持って主体的に課題を解決できる人になってもらいたいという思いもあったそうです。
クラスの担任がいると、あらゆる問題が「あの担任のせい」になってしまい、
- 勉強ができない
- クラスに落ち着きがない
- クラスで頻繁に喧嘩がおきる
こうした問題について子供たちも保護者も「すべて担任のせい」と考えてしまいがちです。
担任の先生について「当たり」とか「ハズレ」と感じてしまったり、あの先生に相談しても意味なさそうだから今年いっぱいはあきらめよう・・・などと思ってしまったり。
しかも、こうした意識は子供や保護者だけでなく、先生たちももっていて、学校で何か問題が起きると「ああ、あいつが担任だからな」と思ってしまうそうなんです。
人のせいにすることは当事者意識をもたないことと同義。
当事者意識を持ち、主体的に課題を解決していく人材を育成したかったから、校長になる前から担任制には疑問をもっていました。
『麹町中学校の型破り校長 非常識な教え』より
麹町中学校の全員担任制(学年担任制)はどのような制度か
麹町中学校の全員担任制(学年担任制)は、例えば3年生では8人の先生が学年全体を見る仕組みです。
「学級活動(ホームルーム)」や「道徳」の授業は、2人体制で各クラスへ出向いているそうです。
生徒や保護者が学校に相談ごとがある場合は、学年担当の誰に相談してもかまいません。
三者面談では、保護者と生徒が先生を指名できるようになっています。
全員担任制(学年担任制)のメリット
異変を早期発見できる
- 固定の担任がいないと、子供たちに目が行き届かないのでは?
- 問題を抱える子に細やかなフォローができないのでは?
と思うかもしれませんが、問題を抱えている子については学年担当の先生たちで密に情報共有し、複数の先生の目があるので異変の早期発見はむしろしやすくなっているのだそうです。
先生たちのコミュニケーションが良くなる
複数の先生たちで複数のクラスを担任するために、学年ごとに週に1回会議を行い、日常でもコミュニケーションを取り合いながら情報共有を図っているそうです。
全員担任制になってから、先生間のコミュニケーションが劇的に良くなったのだとか。
若い先生の育成につながる
一般企業では、現場で一緒に働く中で先輩や上司から仕事のやり方を学んでいく「OJT」というのがありますが、先生方も密にコミュニケーションを取りながら仕事をしていけば、若い先生がベテランの先生からさまざまなノウハウを学ぶことができて育成につながりますよね。
子供たちに最適な対応ができる
導入した理由のところでも書きましたが、チーム医療のように複数の先生で複数のクラスを担任することにより、子供たちに最適な対応ができるようになります。
例えばいじめ問題なども、最初にまずい対応をしてしまうと、いじめが悪化したり、被害者の子が追い詰められたりといったことがありますからね。
うまく対応できない先生が一人で抱え込むのではなく、複数の先生で相談して、うまく対応できる先生が対応する、あるいは助言するなどすれば解決に向かうケースも増えるのではないかと思います。
子供たちに当事者意識が芽生える
クラスの問題は「すべて担任のせい」「ハズレ担任だから」という思考から抜け出し、クラスで困ったことがあったら真っ先に自分たちでどうにかしようと考えるようになるといいます。
それが先生に相談することであっても、「どの先生に相談するべきか」と子供たちが考えなければならないため、子供たちはクラスで起きている問題の当事者になるんです。
当たりハズレがなくなる
先ほど、「すべて担任のせいにする思考から抜け出し・・・」と書きましたが、思考の問題だけでなく実際に担任の先生の力量不足で子供たちが不利益をこうむるケースも多々あるはずです。
また、保護者や生徒と担任の先生との相性、つまり「合う・合わない」の問題もありますよね。
全員担任制であれば、このように力量不足の担任にあたって不利益をこうむったり、合わない先生が担任になって1年間しんどい思いをしたり・・・といったことも少なくなるのではないでしょうか。
麹町中学校では、冒頭でも紹介したとおりさまざまな学校改革がおこなわれていますが、中でも「担任制の廃止はどの学校でもすぐにいい効果が出る施策だ」と校長先生は著書の中で述べておられます。
全国へひろがる全員担任制(学年担任制)
麹町中学校の学校改革は大きな注目を集めていて、全国の学校関係者がたくさん学校の視察に来られているようです。
メリットの多い制度だという認識が広まり、全員担任制の導入を検討する学校も徐々に増えつつあるようです。
たとえば、富山県南砺市では、教育委員会が全市立小中学校17校で、従来の「1学級1担任」の体制を見直し、複数の教員が学年全体や2つの学年を指導する「チーム指導」を導入することを決めたそうです。
参考
全市立小中で担任制見直し、チーム指導へ 富山県南砺市教育新聞
また、茨城県取手市に2015年に起きた中学3年生女子生徒のいじめ自殺問題の再発防止策として、学校に対して次のように全員担任制の導入を求める提言が出ています。
担任一人で対応できなかったことを踏まえ「全員担任制」や「複数担任制」など、複数の教員で生徒を見る制度の導入を求めた。都内の学校の例を参考に、一週間ごとに担任が代わったり、面談する教員を選べるようにする具体例も挙げた。
このほか、木村泰子先生が初代の校長を務められた大阪市立大空小学校では、10年以上も前に学級担任制を廃止して「全員担任制」を導入しています。
「おはよう」から「さようなら」まで、学級担任1人の授業だけで子供が1日の学びを終えることに、疑問を持っていました。小学生は1日に5~6時間の授業を受けますが、担当制なら複数の先生の授業を受けることができ、多様な価値観に触れることができます。
参考
「脱ブラック学校」 カラフルな教育が子供を変える教育新聞
今うちの子がハマっていて、すっごく楽しいのに思考力がきたえられるんです。