Eテレで2019年9月21日放送の「ウワサの保護者会」
テーマは「激論!運動会」
※再放送は9月28日(土)午後0時30分~
近年、運動会といえば、組み体操での事故や熱中症が問題視されていますね。
長男が小6のときは組み体操でクラスメイトが指を骨折していますし、そこまでして何で全員参加であんな危険なことさせるんだろう?とずっと疑問を感じていました。
熱中症の危険がある猛暑の中で、子供たちに1日3時間も4時間も運動会の練習をさせることも絶対おかしい!と感じていました。
なので、今回のウワサの保護者会のテーマ「激論!運動会」は興味津々。
絶対おかしい!ってテレビで言ってもらってスッキリしたい、という期待と、根性論が肯定されてたらどうしよう・・・という不安がありました。
なんだか胸が熱くなって、涙が出てきたんです。
運動会に対する子供たちの本音は?
番組では子供たちに運動会についてどう思うかインタビューをしていました。
もちろん、「楽しい。燃える」という子もいれば「練習がきついから好きじゃない」という子もいます。
中でも、「小中学生のころ運動会がつらかった」と語る高校生の女の子の話に、運動会がイヤでイヤでたまらない子の気持ちがすべて表されていると思いました。
- 一番嫌なのは自分だけの種目。たとえば100m走は自分の実力がわかってしまうから他の人と比べられるし見せたくない
- 運動が苦手なことを大勢の人に見られるのが嫌だった
- 勝敗がつく競技で足を引っ張ってしまうのがつらかった。周りに迷惑をかけるし負けるのも嫌なのでつらかった
- 何より、どうして参加しなくてはいけないの?と参加する意義を見出せないことが一番つらかった
- この時期は運動会をすると決まっていて、特に意味もなく目的も聞かされずにただ行事をこなしていく感じ
- 運動能力に関係なくみんなが楽しんでできるものならいいのに
わかるわかる!めちゃくちゃわかります。
わたし自身、子供のころ運動会はだいっきらいでした。
走るのが遅い子にとっては、運動会でたくさんの保護者が見に来ている中で走らされるのって、公開処刑みたいな気分なんですよね。
本当に恥ずかしい。とにかくイヤ。お願いだから勘弁して。もう逃げ出したい・・・こんな気持ちです。
うちの子が運動会の練習をしているときも、「うちのクラスは足がめちゃくちゃ遅い子がいるから1位は絶対無理。最下位確定」みたいなことを言っていて、わたしはとっても胸が痛みました。
その足の遅い子は、クラスの子からこんな風に思われてどんな気持ちだろう・・・って。
そもそも運動会はなんでやるの?
運動会を楽しんでいる子は、それはとても結構なこと。楽しめているなら何よりです。
でも運動会を苦痛に感じている子は「そもそも運動会ってなんのためにやるの?」「なんでこんなことやらなきゃいけないの?」と思ってしまいますよね。
やらなかったら怒られるから仕方なくやるんですが。
運動会が大嫌いだった子供のころのわたしは、運動会はつらいことを我慢する「修行の場」みたいな感じにとらえていました。
子供につらいこと、苦しいことを経験させる場。
今より練習期間も長かったですし、暑い中、組み体操の練習を延々とやらされたことも覚えています。
番組では、保護者からこんな意見が出ていました。
- 運動会に反対ではないが、子供が楽しんでいるかが大切。先生が教育の課程でやっているだけなのか。誰のための運動会なの?
- 勝ち負けに貢献できたできないではなく、主体的に参加している感じがないから蚊帳の外に置かれる感じになって余計にネガティヴな思いになるのでは?
確かに。
誰のための運動会?
保護者に巨大な組み体操を見せて「おぉー!」と言わせるため?先生の自己満足のため?
子供たちが自ら保護者にすごいものを見せたい!と思ってがんばっているならともかく、怒られるから仕方なく「やらされ感」でやっていて、いったい何の意味があるんだろう・・・
巨大な組み体操は無料のサーカス!?
元小学校教員で教育評論家の東和誠さんコメントにも納得しました。
組み体操の高層化などより見栄えがいいように、より感動できるようにという方向に向かっているのがまずい。
見栄えを重視するのは、教員が保護者の目を過剰に意識しているから。
「昨年よりも出来が悪かった」などのクレームをなるべく受けたくない。穏便にやりたいという意識が強く働いている。
限られた練習時間で完成度を高めようとするあまり行き過ぎた指導になってしまう。
炎天下で2時間も練習して、同じところを何回も踊らされて、踊るのが楽しい子でもいやになる。練習中乗り気じゃない時もあると思う。
そこで先生の怒鳴り声や、厳しい指導があるのは「運動会あるある」。
名古屋大学教育学部准教授の内田良さんも「先生方は、本当に保護者目線を気にしている。驚くくらいに」と同意していました。
保護者から拍手をもらいたいと思うあまりついつい練習熱心になってしまう。
でも時間がない。
だから無理くりやっているという感じなのだそうです。
「巨大な組み体操は無料のサーカス」という内田先生の言葉がとても印象的でした。
過激な言い方のようですが、極論そういうことかもしれないと思いました。
すごい組み体操を見たいと期待している保護者と、保護者の期待に沿うようなすごい組み体操を見せたいとはりきっている先生たち。
そして「なんでこんなことしなきゃいけないんだ」と思いながら、ありえない重さとヒザの痛みと、高所から落ちる恐怖にたえて組み体操の練習をする子供たち。
そう考えると異常です。
(保護者より)
ピラミッドの中って、「ううっ」とか子供たちの呻き声がしているらしい。「早くしてくれー」とか。
そうです、そうです。
うちの子も言ってました。
半ズボンでサポーターもつけないので、ひざに運動場の小石がめり込んでめちゃくちゃ痛いんだそうです。
そしてちょっとでも体のバランスを崩すとグキっと指を骨折してしまうんです。
内田先生はこうもおっしゃっていました。
毎回体育の時間に何かを学ぶのではなく、ただ重さに耐え忍ぶ。
これは体育として意味があるのか。
安全にみんなが楽しくやるにはどうしたらいいのかを考えなければいけない。
おっしゃる通りです。
重みに耐え続けることのどこが体育なんだ!?
と、ここまでは現状の運動会への問題提起なんですが、後半はすばらしい解決策の例を見せてくれました。
麹町中学校「子供たちが運営する運動会」に感動!
千代田区立麹町中学校の運動会の例です。
麹町中学校というと、ご存知の方も多いのでは?
今ものすごく注目されている中学校ですよね。
わたしは「林先生の初耳学」という番組で麹町中学校の校長先生のインタビューを見て初めて知り、こんな本も購入しました。
とにかく、公立中学でありながら、今までに無い画期的な試みをどんどん実施している中学校です。
麹町中学校では、運動会の企画や運営を担うのは生徒たち。
2~3ヵ月前から会議を重ねて準備するのだそうです。
参加者の誘導や用具の準備、司会、プログラムや当日の進め方もすべて生徒が中心になって決めます。
うまくいかないことがあっても先生たちはできるだけ口を出さず見守っているそうです。
工藤勇一校長のコメント
子供が自然にアイデアを出し合ってぶつかり合って、でもひとつにしていくためにはどうしたらいいのか? そういうことを学んでいる。
ただし1つだけ課題を与えている。
「保護者や教員とか大人は楽しまなくていいから、君たちだけが楽しんでくれ。でも全員。」という目標を与えた。
これまで曖昧だった運動会の目標を明確に示した。
そうですよね。運動会は保護者のためでも先生のためでもなく、子供たちのためのもの。
それも、運動が得意な子だけが楽しむのではなく、「生徒全員」が楽しめるようにするのが目標。
運動会企画委員の生徒さんも「誰も置き去りにしないというところに共感できた」と話していました。
なんかもう、このへんでじわ~っと胸が熱くなってきます。
もちろん、生徒に運営を任せたからといって、いきなりうまく行くわけではないでしょう。
でも、はっきりした目標があるから、毎年さまざまな改革が行われてきて、現在はこのような形になっているそうです。
クラス対抗制の廃止
運動が苦手な子がクラスの仲間から責められ人間関係にヒビが入ることもある。
そのため、1日限りのチームを作ることにした。
種目を選べる
強制参加で嫌な思いをする生徒が出ないよう、出場する種目を選べるようにした。
毎年恒例の全員リレーは「選抜リレー」としておこなうことに。
運動能力によらず誰もが楽しめる
「三輪車競争」などユニークな種目もある。
今年新たに作られた種目で、チームで一人を担いで運ぶ競技です。
この種目が作られた理由が・・・
病気で足に力が入りにくく、走ることが難しい生徒さんがいるから。
「この種目なら運ばれる役として自分も参加できるし、体育祭が楽しくなった」と笑顔で話す生徒さんを見て、わたしの涙腺が崩壊しました。
子供が運営したらグダグダの運動会になるのでは?
先生が怒鳴りつけながら生徒たちを動かし、時間通りに完璧に運営する運動会とはちがって、子供たちが考えて子供たちが運営・進行をする運動会ですから、やっぱりゆるいというか、キビキビしていない運動会にはなってしまうようです。
当初はそれを「だらりとしていて見がいがない」と感じる保護者もいたようです。
また、進行が1時間近く遅れてしまい、保護者から「見に行けないじゃないか」とクレームが入ったこともあるのだとか。
でも、子ども自身が運動会の運営に取り組んでいる姿を見て「なるほど大切なのはプロセスなんだ」と気づいたり、「子供たちが運営しているのだから時間がずれることもある。仕方ない」と保護者も理解してくれるようになったのだそうです。
そして今では、「子供が楽しんでいて、とても良かった」という感想が出るような運動会になっています。
「子供が楽しんでいる」
それで、保護者としては十分満足。
子供が先生に怒鳴られ痛い思いをしながら練習して、ピシッとそろったすごい芸を見せてくれるよりも、子供自身が楽しんで運動会に参加していることの方が嬉しいんです。
学校は保護者に説明すればよい
学校側も、「子供が運営する運動会」について保護者の理解を得るために説明会を開いて働きかけてきたそうです。
とかく先生方は「保護者が求めるから」「保護者からクレームが来るから」と、保護者のせいでこうなっているのだ、というようなことをおっしゃいますが、保護者の理解を得るための努力をしてみてもよいのではないかと思うんです。
これって校長先生の仕事でしょうから、校長先生が逃げずにきちんと保護者に説明することが大事なのではないでしょうか。
無料サーカスを求める保護者ばかりではありませんよ。
こんなことしなくていいのに・・・むしろやめてほしい、と思っている保護者もいます。
また、無料サーカスを求めていた保護者でも、学校がどういう運動会を目指すのか、それが子供にとってどういう意味があるのかなど、きちんと説明すればちゃんと理解してくれるはずです。
本当の意味で「子供たちのための運動会」が実施されるようになることを願っています。